台湾で暮らす、働く、または事業や投資を行うにあたって、現地の税制度を正しく理解することは非常に大切です。
台湾の税制は、日本と似ている部分もありますが、課税の仕組みや税率、申告方法などにおいて独自の特徴を持っています。
本記事では、台湾の税金の全体像から具体的な税目の種類、日本との制度的な違い、さらには今後の改正動向までをまとめました。
日本と台湾の比較を通じて、実際に台湾で活動する上での注意点や対策も紹介しますので、これから台湾に関わる方はぜひ参考にしてください。
台湾の税金の全体像
台湾の税制は日本とは異なる構造を持ちつつも、基本的な部分では共通点も多く存在します。特に、台湾では中央政府が管理する「中央税」と、地方自治体が管理する「地方税」に分かれており、それぞれに独自の税目があります。台湾に住んだり、働いたり、投資を行う際には、どのような税金が課せられるのか、またそれがどのように計算されるのかを把握しておかなければなりません。
以下では、台湾の税金の基本構造と日本との比較を踏まえつつ、主な税金の種類や申告の仕組みを詳しく解説します。
中央税と地方税の違い
台湾の税金には、大きく分けて「中央税」と「地方税」の2つがあります。中央税には、所得税や法人税などがあり、国の歳入として用いられます。これらは財政部傘下の国家税務局によって管理されているため、全国的に統一された制度のもとで徴収されます。
一方、地方税には、土地税や建物税があり、地域の公共サービスに充てられます。これらは地元の政府機関が徴収し、地域の公共サービスやインフラの整備に充てられますが、日本と異なり、地方税でもある程度の裁量があるため、税率や徴収方法が地域によって若干異なることがあります。地方ごとに税率が異なる点は、日本との違いと言えるでしょう。
台湾の税制の基本的な仕組み
台湾で税金を正しく納めるには、税制の基本を理解することが大切です。なぜなら、台湾は属地主義を採用しており、所得の発生地や滞在日数によって課税範囲が変わるからです。例えば、183日以上滞在する居住者は海外所得も申告が必要になる場合があります。また、電子申告システムが整っており、比較的スムーズに手続きが可能であるため、外国の方にも利用しやすい環境と言えるでしょう。
日本との大まかな比較
台湾と日本の税制には共通点がありますが、いくつかの点で大きな違いも存在するため、理解する必要があります。特に、課税の判断基準や税率に差があるためです。
例えば、日本では「居住者」は1年以上居住する意思がある者とされ、非居住者との税率や控除の取り扱いに差がありますが、台湾ではより厳密に日数で判断されます。また、日本では消費税が8〜10%であるのに対し、台湾では営業税というVATに近い制度が採用されており、一般的な税率は5%と比較的低く、相続税も控除額が高いため、資産移転には有利でしょう。
台湾の主な税金の種類
台湾で課税される主な税金は、個人および法人の所得にかかる税金、消費に関連する営業税、不動産取引に関する税金、相続や贈与に関連する税金など多岐にわたります。それぞれの税金は適用される対象や税率が異なるため、正確な理解が不可欠です。
以下では各税種について詳細に解説していきます。
所得税(個人所得税)、税率・控除・申告時期など
台湾の個人所得税は、居住者と非居住者で取り扱いが大きく異なります。居住者には総合課税が適用され、給与所得や利子所得、不動産所得などが合算されて累進課税されます。
2025年時点での所得税率は以下の通りです。
- 所得0〜540,000NTD:5%
- 540,001〜1,210,000NTD:12%
- 1,210,001〜2,420,000NTD:20%
- 2,420,001〜4,530,000NTD:30%
- 4,530,001NTD以上:40%
控除には標準控除、特別控除、扶養控除などがあり、家族構成や所得の種類によって申告内容が異なります。毎年5月に前年度分の確定申告を行い、納税額を確定させるので、きちんと理解しておきましょう。
法人税、企業にかかる税率・申告義務
台湾の法人税は2025年現在、標準税率が20%に設定されています。企業が得た課税所得に対して一律に課税され、一定の控除制度や税額控除の適用も可能です。また、特定の中小企業については軽減税率が適用される場合があります。
法人税の申告は毎年5月に行われ、事業年度終了後6カ月以内に中間申告が必要となるケースがあるため、注意しなければなりません。企業活動の透明性を確保するため、帳簿の整備や監査法人による報告義務が設けられています。
営業税(VATに相当)、税率と対象となる取引
営業税は、台湾版の消費税とも言える税制で、ほとんどの販売取引やサービス提供に対して課税されます。一般的な営業税率は5%で、売上高に対して課税されますが、銀行や保険、医療、教育などの一部サービスは非課税または免税扱いとされることがあります。
営業税は月単位または2カ月単位で申告し、徴収した税額と支払った税額の差額を納税または還付する方式が採られています。また、インボイス制度も併用されており、適正な取引記録が求められるため、きちんと帳簿などをつけておくと良いでしょう。
遺産税・贈与税、基礎控除や相続人の条件
台湾の遺産税と贈与税は、2009年の改正で税率が大幅に緩和されました。2025年現在、税率は10%で、課税対象となる遺産または贈与額に対して一律で課税されます。基礎控除額は1,200万NTDとなっており、相続人の構成によってはさらに控除額が加算されます。
また、日本とは異なり、非居住者でも台湾にある財産に対して相続税が課される可能性があるため、国際的な資産を保有する場合には特に注意が必要です。
不動産に関する税金、土地税・建物税・不動産取引税など
台湾で不動産を保有する場合には、所有期間中に土地税・建物税、取引時に不動産取引税が課せられるため、事前に把握しておきましょう。
土地税は固定資産税の一種で、毎年課税され、土地の利用目的によって税率が異なります。さらに、住宅用地として使用されている場合は、優遇税率が適用されます。
建物税も毎年発生し、建物の所在地や用途に応じて税率が決まります。不動産取引税は、売買や贈与が発生した際に課税され、売却益に対する課税も行われることがあります。
その他の税金(関税・印紙税など)
台湾では、上記以外にも関税や印紙税などの税金があります。関税は輸入品に対して課され、輸入品目や原産地によって異なる税率が適用されます。印紙税は、一定額以上の契約書や取引文書に対して課され、商業活動において頻繁に発生します。
また、特定の物品に対する物品税(タバコ・酒など)も存在し、これらの税収は公共福祉の財源として活用されます。
日本と台湾の税制の違い
台湾と日本の税制度には類似点も多いものの、運用方法や課税対象の考え方には明確な違いが存在します。両国で居住・勤務・投資を考えている場合、それぞれの制度の違いを正確に把握しておくことで、余計な納税リスクやトラブルを回避することができます。
以下では、課税ベースの定義や所得税の算出方法、相続制度、税務署の手続きに関する相違点を中心に解説します。
課税ベースの違い(居住者の定義など)
日本では「居住者」の定義が曖昧であり、「住所」または「1年以上の居住意思」があることが基準とされます。一方、台湾では滞在日数に基づいて明確に分類され、暦年で183日以上台湾に滞在した者が「居住者」、それ未満の場合は「非居住者」とみなされるため、気を付けなければなりません。
この違いにより、例えば、日本では生活の拠点が国内外にまたがっていても税務署の裁量で居住者と判断されるケースがありますが、台湾では日数管理が重要な判断となります。非居住者に対しては、源泉徴収のみで課税が完了する場合が多く、控除の適用が限定されるため、納税負担が重くなることもあります。
所得税の計算方法と税率比較
台湾の所得税制度を理解することは、日本と比較するうえで欠かせません。なぜなら、課税方式や控除制度に違いがあるためです。日本では所得を総合課税と分離課税に分け、累進課税が行われます。一方、台湾でも合算課税が基本ですが、税率の幅が日本より狭く、最高税率も40%とやや低めに抑えられています。さらに、台湾では申告時に「標準控除」か「列挙控除」を選ぶ方式が採られており、制度全体が簡素でわかりやすい点が特徴です。医療費や教育費が控除対象外となる場合もありますが、全体的に申告手続きは日本よりもスムーズに進むでしょう。
相続税制度の違い
台湾と日本の相続税制度には大きな違いがあります。日本では、相続税の最高税率は55%と高く、課税所得が多い場合には税負担が重くなりますが、これに対して台湾では、遺産税・贈与税の税率は一律10%と非常に低く、加えて基礎控除も1,200万台湾元(約5,500万円)と高額に設定されています。
また、日本の相続では不動産評価額の計算や贈与歴の遡及適用(3年以内)などが複雑であるのに対し、台湾では相続財産の種類が限定的で、評価方法も比較的シンプルです。資産移転の柔軟性という観点では、台湾の制度は相対的に有利といえるでしょう。
税務署との対応・電子申告の可否など
台湾での税務申告は、電子申告制度の利便性が高いため、スムーズに行える点が大きな利点です。なぜなら、居留証と納税者番号があれば、外国人でも簡単にe-Filingが利用できるからです。実際に、USB型IC証明書やオンライン認証コードを使うことで、複雑な手続きを省略できます。一方、日本のe-TaxはマイナンバーカードやICカードリーダーが必要で、初期設定に時間がかかることもあります。このように、台湾の電子申告システムはシンプルで使いやすく、多くの納税者にとって大きなメリットとなっているでしょう。
台湾に住む・働く・投資する場合の税務注意点
外国人が台湾に滞在・就労・投資する場合、現地の税務制度を正しく理解しておくことは、トラブルを回避する上で非常に重要です。税務上の居住者判定、申告方法、日本との租税条約の内容などを踏まえ、実務的なポイントを整理しておきましょう。
居住者・非居住者の税制上の違い
台湾での税務上の立場を理解することは、税負担を正しく把握するうえで非常に大切です。なぜなら、居住者と非居住者では適用される税率や控除制度が大きく異なるからです。居住者には累進課税が適用され、各種控除を利用できますが、非居住者は通常20%の一律源泉徴収となり、控除も受けられません。例えば、観光ビザなどで短期滞在中に報酬を受け取ると、20%の税金が差し引かれ、手取りが減る可能性があります。そのため、報酬契約時には税金の扱いについて事前に確認しておくべきでしょう。
日本と台湾の租税条約について
日本と台湾は正式な外交関係がないため、他国間のような「租税条約」は締結されていません。しかし、実務上は「日台民間租税取扱い取決め」(2015年)という覚書により、二重課税の回避や情報交換が行われています。
この取り決めにより、同一所得に対して日本と台湾で二重課税されることを回避するための「外国税額控除」や、「居住者認定」の協議が可能です。ただし、条約ではないため強制力に限界があり、判断が税務署の裁量に委ねられる部分も多い点には注意が必要でしょう。
確定申告の方法と必要書類
台湾で確定申告を行う際は、毎年5月の1カ月間が申告期間です。
申告に必要な主な書類は以下の通りです。
- 給与明細または所得証明(会社からの源泉徴収票)
- パスポートおよび居留証のコピー
- 銀行口座情報
- 控除証明(医療費、保険料、寄付など)
電子申告を利用する場合は、専用ソフトウェアを通じて上記情報をアップロードし、オンラインで提出します。税務署からの還付金は、申告後2〜3カ月で銀行口座に振り込まれるのが一般的です。
現地会計士の利用について
台湾では、外国人の税務申告に精通した会計士が多く存在します。特に、ビジネス投資や不動産取引などの複雑なケースでは、専門家のサポートが欠かせません。報酬の目安は、個人申告で2,000〜5,000NTD、法人の税務代理で10,000NTD以上が相場となります。
英語や日本語に対応した会計士事務所も多いため、言語面の不安がある場合は、事前に対応可能な専門家に依頼することをおすすめします。
税制改正や今後の動向
台湾では経済発展に伴い、税制の見直しが進んでいます。特に、法人税の競争力確保や、国際的な透明性への対応が注目されています。近年では最低税負担制度の導入や、富裕層への課税強化も議論されています。今後の動向を把握することは、長期的な資産管理や事業展開において重要な指針となるでしょう。
最近の税制改正(例:最低税負担制度など)
2021年以降、台湾では「最低税負担制度(Alternative Minimum Tax)」が導入されています。これは、通常の所得税に加え、特定の投資控除を利用して課税所得を大幅に減らしている高所得者に対して、最低限の税負担を義務づける制度です。
この制度により、不動産や株式などの資産運用を通じて所得を圧縮するケースに歯止めがかけられ、税の公平性が確保されるようになりました。特に資産形成を目的とした投資家にとっては、今後の税務戦略を再検討する必要があります。
政府の税制改革方針
台湾政府は中長期的に「簡素・透明・公平」な税制を目指しています。個人所得税や営業税の電子化促進、地方税の徴収効率化、グローバル企業への課税強化などが具体的な改革項目です。
また、地価税や建物税の見直しも進んでおり、不動産バブルを抑制する目的で税率調整が行われる可能性もあります。税制改革は短期間で大きく変わることは少ないですが、段階的な変化には注意が必要でしょう。
将来予測とリスク
今後の台湾の税制において想定されるリスクとしては、以下のような点が挙げられます。
- OECDが推進する国際課税基準(BEPS)への対応により、法人税制が一層複雑化する可能性がある
- 高齢化が進む中で、社会保険料の税化が議論されることで、個人や企業に新たな負担が生じる可能性がある
- 環境対策としてカーボン課税や環境税の導入が進めば、エネルギー消費の多い企業などには大きな影響が出る可能性がある
これらの変化は企業経営や資産運用に直接影響を与えるため、今後は制度改正の動向を注視しつつ、柔軟かつ長期的な税務戦略を立てることがますます重要になるでしょう。
まとめ
台湾の税制は、日本と似た点もありながら、独自の制度設計や課税ロジックを持つ非常に興味深い制度です。個人・法人問わず、正確な情報と適切な手続きを踏むことが、無用なトラブルや損失を防ぐポイントとなります。
特に、居住者か非居住者かの分類や、営業税・不動産税などの扱い、日本との制度の差異については、事前に専門家へ相談しながら対応するのが賢明です。今後も税制改正や国際基準への適合が進む中、常に最新情報をチェックしながら、適正な納税と戦略的な税務管理を心がけましょう。



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